2016年1月17日日曜日

気候変動適応計画

口頭試験もいよいよ終盤も終盤、わたしが関わったひとは明日、明後日の総監を受験するひとが最後です。
今夜から関東地方は積雪もあるようで、明日の朝は電車等の公共交通機関がマヒするんじゃないかと心配です。
うまくゆくことを念じるのみです。
口頭試験については口頭試験終了後に内容の振り返りをする予定です。

今日はそんな落着かない気分をなだめるように記事を投稿します。
これまで河川や沿岸部などにおいての適応策については個別に公表されてきましたが、昨年11月末に国土交通分野全体で整理された適応計画が発表されました。

最初の「はじめに」のところは建設環境だけでなく建設部門として身につけておかねばならない前提条件が整理されています。
このあたりのことを踏まえることができると建設部門のなかの環境系の技術者としての相応しさが自然と身につけられます。しっかり取り入れてください。
そのあとの分野別の影響と対応策の方向性もそれぞれしっかりチェックしておいてください。

平成27年度の試験では、問題Ⅲでコンパクトシティの実現に向けた計画の際にどのような環境配慮が必要か?が問われました。
同じように考えると、『気候変動への適応策を講じる際に、建設環境分野ではどのような取組が必要か?』が問われそうですよね。
そのときはこの資料を土台に展開してゆくことをオススメします。

国土交通省気候変動適応計画

 平成27年11月27日
 地球温暖化の進行がもたらす気候変動等により懸念される影響は、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減と吸収対策を最大限実施したとしても完全に避けられず、影響に備えるための「適応」が必要だとされています。
 こうした中、国土交通省は、国土の保全をはじめ多様な分野を所管し、安全・安心な国土・地域づくりにおいて大きな役割を担うことから、昨年度より、国土交通省環境政策推進本部において適応策を検討するとともに、社会資本整備審議会環境部会・交通政策審議会交通体系分科会環境部会でご審議いただく等、適応計画の検討を進めてまいりました。また、平成27年9月から検討が開始された政府の適応計画にも、国土交通省の検討内容を反映する等の作業を進めてまいりました。
 平成27年11月27日、気候変動の影響への適応計画が閣議決定されたことに伴い、国土交通省が実施する適応策をまとめた「国土交通省気候変動適応計画」を公表しました。


地下ダム【沖縄県糸満市米須】

以下、建設環境分野と直接的に関連する部分をピックアップしました。
間接的な部分もとても重要な概念や取組の方向性が記述されていますので詳しくは本文をチェックしてください。

国土交通省気候変動適応計画 ~気候変動がもたらす我が国の危機に総力で備える~
Ⅰ.はじめに
 地球温暖化が地球や人類にとっての危機をもたらすことが世界的に認識されるに至って久しい。地球温暖化が進行すれば、短時間強雨や大雨の発生頻度の増加、海面水位の上昇、台風の激化、干ばつ・熱波の増加等の気候変動をもたらす。この結果、水害、土砂災害、高潮災害、渇水被害の頻発・激甚化といった影響・リスクの増加が懸念される。
(略)

Ⅱ.基本的考え方
1.気候変動による国土交通分野への影響
 平成 25 年 9 月から平成 26 年 11 月にかけて承認・公表された IPCC 第 5 次評価報告書では、気候システムの温暖化は疑いの余地がないことが示されている。
(略)

2.国土交通省が推進すべき適応策の理念
 国土交通省では、現在生じている、あるいは将来生じうる気候変動の影響による被害を最小化する施策を、様々な主体による適切な役割分担とできるだけ科学的な知見に基づいて適切な時期に計画的に講じることにより、効果的・効率的に①国民の生命・ 財産を守り、②社会・経済活動を支えるインフラやシステムの機能を継続的に確保するとともに、③国民の生活の質の維持を図り、④生じうる状況の変化を適切に活用することを基本的な理念として適応策を推進することとする。
(略)

3.適応策の基本的な考え方
(1)不確実性を踏まえた順応的なマネジメント
(略)
 気候変動による将来影響の予測 (発現時期や場所、程度)には不確実性を伴う。 このため、適応策を推進する際には、順応的なマネジメントを行うこととし、気候変動のモニタリングを継続的に行いつつ、気候変動の進行や最新の気候予測データ、 地域の社会経済状況の変化、既往の対策及び新たな対策によるリスクの低減効果を踏 まえて、必要なタイミングで的確な適応策を選択できるように進めることとする。

(6)自然との共生及び環境との調和
 国土交通省においては、社会資本整備にあたってこれまでも自然の営みを視野に入れ、地域特性に応じて自然が有する機能も活用しつつ、自然と調和しながら、生物多様性の保全や持続可能な利用の観点から、自然環境を保全・再生・創出する施策に取り組んできた。適応策の立案や実施においても同様に、自然環境の保全・再生・創出に配慮することとする。また、目的や地域特性に応じて、生物の生息・生育の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の抑制等といった自然環境が有する多様な機能(グリ ーンインフラ)も活用する。

Ⅲ.適応に関する施策 
1.自然災害分野
2)海岸
(影響)
 沿岸部(海岸)において、現時点においても強い台風の増加等を踏まえた高潮等の浸水による背後地の被害や海岸侵食の増加が懸念されている中、気候変動に伴う強い台風の増加等による高潮偏差の増大・波浪の強大化及び中長期的な海面水位の上昇により、さらに深刻な影響が懸念される。

(進行する海岸侵食への対応の強化) 
 沿岸漂砂による土砂の収支が適切となるよう構造物の工夫等を含む取組を進める とともに、気候変動によって増大する可能性のある沖向き漂砂に対応した取組も必要 に応じて実施する。また、河川の上流から海岸までの流砂系における総合的な土砂管 理対策とも連携する等、関係機関との連携の下に広域的・総合的な対策を推進する。

2.水資源・水環境分野
(1)水資源
2)施設の能力を上回る渇水による被害を軽減する対策
(渇水時の河川環境に関するモニタリングと知見の蓄積)
 渇水時の河川流量の減少により、河川に生息・生育する水生動植物等の生態系や水質など河川環境に影響が生じる懸念があるため、渇水時の河川環境に関するモニタリ ングを実施し、知見の蓄積を図る。

(2)水環境
(影響) 
 気候変動によって、水温の変化、水質の変化、流域からの栄養塩類等の流出特性の変化が生じることが想定される。

(水環境全般に関する適応策)
 水質のモニタリングや将来予測に関する調査研究を引き続き推進するとともに、水質保全対策を推進する。具体的には、気候変動に伴う水温上昇など水域の直接的な変化だけでなく、流域からの栄養塩類等の流出特性の変化に関する調査、さらに、下水道の高度処理、合流式下水道改善対策等の水質保全対策を引き続き推進する。

(湖沼・貯水池における適応策)
 湖沼における水温変化に伴う底層環境変化の検討、底層貧酸素化や赤潮、青潮の発生リスクに関する将来予測を行う。
 また、貯水池の選択取水設備、曝気循環設備等の水質保全対策を引き続き実施するとともに、気候変動に伴う水質の変化に応じ水質保全設備の運用方法の見直し等を検 討する。

(沿岸域における適応策)
 港湾域、内湾域における水温変化に伴う底層環境変化の検討や、底層貧酸素化や赤潮、青潮の発生リスクの将来予測に関する検討を行う。

3.国民生活・都市生活分野
(2)ヒートアイランド 
(影響) 
 都市の気温上昇は既に顕在化しており、熱中症リスクの増大や快適性の損失など都市生活に大きな影響を及ぼしている。将来、都市化によるヒートアイランド現象に、気候変動による気温上昇が重なることで、都市域ではより大幅に気温が上昇すること が懸念されている。

(適応策の基本的考え方)
 ヒートアイランド現象を緩和するため、実行可能な対策を継続的に進めるとともに、短期的に効果が現れやすい対策を併せて実施する。また、ヒートアイランド現象の緩和には長期間を要することを踏まえ、ヒートアイランド現象の実態監視や、ヒートアイランド対策の技術調査研究を行う。

(緑化や水の活用による地表面被覆の改善)
 気温の上昇抑制等に効果がある緑地・水面の減少、建築物や舗装等によって地表面 が覆われることによる地表面の高温化を防ぐため、地表面被覆の改善を図る。
 具体的には、大規模な敷地の建築物の新築や増築を行う場合に一定割合以上の緑化を義務づける緑化地域制度等の活用や、住宅や建築物の整備に関する補助事業等における緑化の推進、一定割合の空地を有する大規模建築物について容積率の割増等を行う総合設計制度等の活用により、民有地や民間建築物等の緑化を進める。
 また、都市公園の整備や、道路・下水処理場等の公共空間の緑化、官庁施設構内の緑化、新たに 建て替える都市機構賃貸住宅の屋上における緑化を推進する。下水処理水のせせらぎ用水、河川維持用水等へのさらなる利用拡大に向けた地方公共団体の取組の支援や、雨水貯留浸透施設の設置の推進等により、水面積の拡大を図る。
 また、路面温度上昇抑制機能を有する舗装技術等の効果検証を実施するとともに、快適な環境の提供に資する道路緑化等を含む総合的な道路空間の温度上昇抑制に向けた取組の具体化を図る。

(人間活動から排出される人工排熱の低減)
 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)等に基づき住宅・建築物の省エネルギー化を推進するほか、自動車からの排熱減少に資する環境性能に優れた自動車の普及拡大、都市鉄道・都市モノレール・新交通システム・路面電車等の整備による公共交通機関の利用促進に取り組む。
 また、道路ネットワークを賢く使い、渋滞なく快適に走行できる道路とするため、交通流対策を推進する。トラックによる貨物輸送から、鉄道・内航海運による貨物輸送へのモーダルシフトを推進す るとともに、トラック輸送についても共同輸配送等を通じて輸送の効率化を図る。さらに、官民連携協議会を推進母体に、下水熱利用の案件形成を支援する等、下水熱の 有効利用を推進する。

 (都市形態の改善(緑地や水面からの風の通り道の確保等))
 都市を流れる「風の道」を活用する上での配慮事項等を示した「ヒートアイランド現象緩和に向けた都市づくりガイドライン」の活用を促進することにより、広域、都市、地区のそれぞれのスケールに応じて、都市形態の改善や地表面被覆の改善及び人20工排熱の低減等の対策が適切に行われる都市づくりを推進する。
 また、「首都圏の都市環境インフラのグランドデザイン」及び「近畿圏の都市環境インフラのグランドデザイン」に基づく取組の推進、特別緑地保全地区制度等による緑地の保全、都市山麓グリーンベルトの整備や、雨水、下水再生水利用によるせせらぎ整備等により、都市における水と緑のネットワークの形成を推進する。

(ライフスタイルの改善等)
 エコドライブによる環境に配慮した自動車の使用の推進、市民活動による打ち水の実施、緑のカーテン等の普及推進に取り組む。

5.その他の分野 
(生態系ネットワーク形成の推進)
 我が国の河川は、取水や流量調節が行われているため気候変動による河川の生態系への影響を検出しにくく、現時点で気候変動の直接的影響を捉えた研究成果は確認できていないが、全国一律で最高水温が現状より 3℃上昇すると、冷水魚が生息可能な 河川が分布する国土面積が本州を中心に現在と比較して減少することが予測されて いる。
 このため、気候変動に対する順応性の高い健全な生態系を保全・再生するため、河 川、湖沼、湿原、湧水、ため池、水路、水田などの連続性を確保し、生物が往来でき る水系を基軸とした生態系ネットワークの形成を推進する。

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